特集 化合物半導体「SiC」「GaN」とは?サンケン電気と次世代パワー半導体


コンテンツ
Part 1. 化合物半導体 SiC、GaNとは?
   ■SiC、GaNの素子特性
   ■シリコンから置き換わるSiC、GaNデバイスの適用範囲

Part 2. SiC、GaNデバイスの採用が期待される用途
   ■SiC、GaNデバイスの採用が期待される9つの用途

解説動画もございます

Siに換わる注目素材|SiC・GaN半導体をわかりやすく解説!! (10分15秒)

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Part 1. 化合物半導体 SiC、GaNとは?

優れた特性を持つSiC、GaN


―半導体製品のはじまりと現在― ゲルマニウムからシリコンへ

半導体の歴史は1950年頃の点接触型トランジスタから始まります。当初はゲルマニウムが用いられていましたが、その後特性が優れているシリコンが半導体製品の主材料となり、現在まで用いられてきました。
半導体製造装置の高精度化や、デバイス構造およびプロセスの最適化など、さまざまな技術の向上によりシリコン半導体製品は進化を続け、身の周りの電気機器の小型化や高性能化に大きく貢献してきました。
これに対し、特にパワー半導体の分野では、シリコンの物性値を大きく上回る化合物半導体を用いた素子開発、実用化が進んでいます。

半導体材料の移り変わり


シリコンより低損失 化合物半導体 SiC、GaN


そこで現在注目されているのが、SiC(呼び方:エスアイシー/シリコンカーバイド/炭化ケイ素)GaN(呼び方:ガン/ガリウムナイトライド/窒化ガリウム)といった材料です。
シリコンは単体の物質であるのに対し、SiCは炭素とケイ素の化合物、GaNはガリウムと窒素の化合物であるため、これらを使った半導体は 化合物半導体 と呼ばれます。
さらに、SiCやGaNはシリコンと比較してバンドギャップが広いため、 ワイドバンドギャップ半導体 とも呼ばれます。(シリコンのバンドギャップが1.1に対し、SiCは3.3、GaNは3.4)
ワイドバンドギャップ半導体は破壊電界強度が大きいという特長があり、シリコンと同じ耐圧を、大幅に薄い耐圧層で実現できます。
シリコンの次の世代を担うことが期待されるということから 次世代パワー半導体 と呼ばれることもあります。

様々な呼び方をされるGaN、SiCパワー半導体


SiCとGaNの優れた物理的特性

ワイドバンドギャップ半導体であるSiCとGaNは、素材そのものの性能指数(εμeEc3)で比較すると、シリコンに対し、SiCは440倍、GaNは1130倍と桁違いの高性能を誇ります。
現在、この素材を活かす周辺技術開発が進められており、従来のシリコン半導体を使用している箇所に、SiCやGaNを用いることで、電子機器のさらなる小型化や高効率化を実現できます。

近年、SiCのウェーハ基板は半導体材料としての品質が高まり、ウェーハ口径も大口径化が進んでいます。それに伴い、大電流化、低価格化が進んでおり、多くの機器に採用されはじめています。

一方、GaNのウェーハ基板はいまだ高価であり、一般的に、安価なシリコン基板上にGaN活性層を形成する横型構造が採用されています。そのため、大電流化することは難しいですが、プロセスを微細化することで、非常に高速なスイッチング動作が要求される用途での採用が進んでいます。

シリコン、SiC、GaNの素子特性

シリコンデバイスから置き換えられるSiC、GaNデバイスの適用範囲

シリコン、SiC、GaNの棲み分け

SiCデバイスはモータ駆動などの高耐圧、大電流用途で有利

SiCは、シリコンの半分を炭素に置き換えた化合物です。炭素とシリコンが強固に結合しており、単結晶のシリコンよりも安定した結晶構造であるため、絶縁破壊強度が高く、活性層を非常に薄くすることができます。 これにより、従来のシリコンデバイスよりも、高耐圧でありながら低損失な素子を可能とします。
SiCデバイスは、シリコンIGBTの置き換えとして、大電流、高耐圧領域から普及が進んでいます。
具体的には、発電システムで使用されるパワーコンディショナや、電化住宅のHEMS、電気自動車(EV)など、システムの小型化や軽量化のメリットが大きい10kW以上の領域での普及が期待されます。

GaNデバイスはスイッチング電源などの小型、高周波用途で有利

GaNは、SiCよりもさらに安定した結合構造を持ち、より絶縁破壊強度が高い材料です。
現在、GaNデバイスは、シリコン基板上にGaN活性層を形成する構造が一般的であるため、SiCデバイスほど耐圧を高くすることはできませんが、高周波用途に向いています。スイッチング電源の場合、高周波でスイッチングさせることで、インダクタなどの周辺部品の小型化が可能です。
GaNデバイスは、1kW以下の電源で、小型要求が強い分野での応用が期待されています。
たとえば、近年市場の拡大が期待される第5世代移動通信システム(5G)では、基地局の電源としてGaNデバイスの採用が期待されます。
また、USB Power Delivery (USB-PD)の規格が制定され、USBケーブルを通して最大100Wまでの受給電が可能となったことにより、スマートフォンやノートパソコンなどの充電器が共通化されつつあります。スマートフォンの充電器は従来から小型のものが好まれており、現在の大きさをあまり変えることなく、急速充電や、ノートパソコンなど中型の電子機器にも対応する充電器が求められます。この実現に最適なのがGaNデバイスであり、今後もGaNデバイスの普及が加速すると考えられます。

サンケン電気のSiC製品展開

サンケン電気では、SiCを使った半導体デバイスを開発中です。
SiCの特長である低スイッチングノイズという特性に加え、サージ電流耐量を向上し高い安全性を確保したSiCショットキダイオードを開発しています。
また、MOSFETについても、大幅に損失を低減し低ノイズなSiC MOSFETと、それを搭載したIPM(800V / 1200V)を開発中です。

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