IGBTが破壊する要因
安全動作領域(SOA)破壊
安全動作領域(SOA:Safe Operating Area)は、順バイアス安全動作領域と逆バイアス安全動作領域に分類されます。順バイアス安全動作領域、または逆バイアス安全動作領域の制限された領域を超えると、IGBTが異常に発熱し、IGBTが破壊する可能性があります。
データシートには、理想条件(シングルパルス、TC = 25°Cなど)での安全動作領域グラフが記載されています。実際の動作条件に合わせてグラフをディレーティングし、安全動作領域内でIGBTを使用します。ディレーティングについてはこちらを参照してください。
順バイアス安全動作領域(FBSOA)
順バイアス安全動作領域(FBSOA:Forward Bias Safe Operating Area)はIGBTがターンオンしている状態で、IGBTが劣化や破壊することなく使用できる電流と電圧の範囲です。順バイアス安全動作領域は以下の制限によって領域が区分されます。
(1) コレクタ-エミッタ間飽和電圧VCE(SAT)で制限された領域(2) コレクタ電流の最大定格値で制限された領域
(3) ジャンクション温度の最大定格値で制限された領域(熱領域)
(4) コレクタ-エミッタ間電圧VCEの最大定格値で制限された領域
逆バイアス安全動作領域(RBSOA)
逆バイアス安全動作領域(RBSOA:Reverse Bias Safe Operating Area)はIGBTがターンオフしたとき、IGBTが劣化や破壊することなく使用できる電流と電圧の範囲です。逆バイアス安全動作領域は以下の制限によって領域が区分されます。
(1) コレクタ-エミッタ間飽和電圧VCE(SAT)で制限された領域(2) ピークコレクタ電流の最大定格値で制限された領域
(3) 素子固有の特性で制限された領域
(4) コレクタ-エミッタ間電圧VCEの最大定格値で制限された領域
静電破壊
ゲート端子は静電気に弱い構造です。人体や実装装置から発生する静電気やサージ電圧がゲートに印加され、ゲートの静電気耐量を超えるとIGBTが破壊する可能性があります。
対策
- 導電性ストラップなどを使用し、人体アースをする
- 作業台では導電性のテーブルマットなどを使用する
- 装置を接地する など
静電気対策の詳細は、こちらを参照してください。
寄生発振による破壊
詳細は並列接続する際の注意点を参照してください。
並列接続する際の注意点
以下に、IGBTを並列に接続する際の注意点を示します。
- 定常時のコレクタ電流ICのばらつきを抑えるため、コレクタ-エミッタ間飽和電圧VCE(SAT)の値が近いIGBT同士を使用します。
- PCBレイアウトのパターンには、寄生インダクタンスやインピータンスなどを含みます。ターンオン、ターンオフなどの過渡時に流れる電流のばらつきを抑えるため、パターンによるばらつきがでないようにIGBTを配置します。
- 並列接続したIGBTをそれぞれ異なるドライバで駆動させると、ドライバごとの出力遅延時間の影響でIGBTの動作にばらつきが生じます。そのため、以下のように、並列接続したIGBTは1つのドライバで駆動させてください。
- ゲート抵抗を接続せずにIGBTを並列に接続すると、寄生発振しやすくなります。寄生発振によりゲート-エミッタ間電圧VGEが最大定格値を超えたり、IGBTが発熱したりして、IGBTが破壊する可能性があります。寄生発振を抑制するため、各IGBTに必ずゲート抵抗を接続してください。
製品のお問い合わせやご相談はこちら
ご希望の製品がラインアップから見つからない場合もお気軽にお問い合わせください。