サンケン技報

サンケン技報は、省エネルギー社会を支えるサンケングループの最新技術や製品を紹介する技術論文です。
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2024年11月号(vol.56)

No. 論文 著者
- サンケン技報 vol.56 統合版
1 白物家電用モータドライバIC SIM1シリーズの開発 川島 良太
山川 裕平
SIM689xMシリーズは幅広い電流定格をラインナップしており、インバータ化白物家電製品に用いられている。今後、白物家電製品全般が省エネ化推進のため世界的にインバータ化へ移行していくと想定されている。多用途に用いられる本シリーズは、さらに安定供給、品質向上が市場から求められている。
新製品SIM1シリーズでは、次世代MICプロセスの採用によるリードタイム短縮化、H side OCP(過電流保護機能)の追加による二次的な破壊拡大防止、LS(ローサイドパワーIGBTエミッタ)–COM(コモン)間ESD保護素子追加によるセット組立時の静電気破壊リスクの回避をおこない、それら市場要求に応えた。また、IGBT品の一部定格において、市場用途の駆動条件に合わせて損失特性を最適化低減し、採用用途の幅を広げた。
2 低ノイズFRD BlueFRD1の開発 神林 佑哉
効率的な電力活用が求められる昨今のパワーデバイス市場では、幅広い用途で使用される高速リカバリダイオード(FRD)によるエネルギー損失削減は不可欠である。また、汎用的なアプリケーションとして用いるためには低ノイズ性も重要である。当社では、新構造により低ノイズでVFスイッチングオフ特性の優れる新しいプラットフォームのFRDであるBlueFRD1を開発した。
3 ESD耐性を備えた起動回路用高機能LDMOSの開発 藤田 直人
地球環境保護という社会課題を背景に日増しに高まるパワーデバイスへの関心にともない、高性能化や小型化などを目的とした研究開発が盛んにおこなわれている。これらの課題に応えるデバイスの一つとして、RC-IGBT(Reverse Conducting IGBT)がある。RC-IGBTは、従来2チップであったIGBTとDiode を1チップに作り込んだデバイスで、外周構造を共用できるため、同じ活性部面積でも小型化が可能である。今回、当社旧世代RC-IGBTに比べ、大幅に特性改善した第一世代RC-IGBTを開発した。第一世代RC-IGBTの開発に当たり、Diode配置による放熱性やスナップバック現象についてシミュレーションを用いて設計検証した事例や、実際のチップ特性について代表例を紹介する。
4 近赤外発光する蛍光体を用いた特殊LEDの開発 梅津 陽介
近赤外光は人間の眼に見えにくいため、照明やディスプレイでは不要とされてきた。しかし、植物育成や分光分析の分野では重要な光であり、LEDを用いた検討がされている。今回、近赤外発光する蛍光体を用いて様々なLEDを開発したので報告する。
5 次世代車載用IPD“SIP1シリーズ”の開発 川口 広明
電動化や自動運転化、コネクテッド化など自動車は大きな変革期に入っており、これに伴って自動車のE/Eアーキテクチャも機能分散型からドメイン型、ゾーン型へと急激な変化が起こっている。
ゾーン型のE/Eアーキテクチャでは、従来のメカリレーやヒューズを用いた配電システムからIPD等の半導体を用いた配電システムへの切り替えが見込まれている。次世代ゾーン型配電システムでは、各ボディードメインコントローラユニットに搭載されるIPDのチャネル数が増加するため、制御用MCUの端子資源の増加や各IPDの保護・監視にかかる演算リソースの増大を招き、開発にかかる工数の増加並びにMCUの高機能化によるBOMコストの増加が課題となる。これら問題を解決するために必要となる機能を盛り込んだ次世代車載用IPD “SIP1シリーズ”を開発したので報告する。
6 高圧フルブリッジ型LLC電源向け高効率同期整流コントローラの開発 金 正烈
伊藤 公一
姜 韓柱
近年、大型TVやEV車用途の高圧バッテリ充電器向けのLLC電源では、電源のスリム化のためトランスの小型化およびパワー素子のヒートシンクのレス化・小型軽量化が求められている。この要求に応えるためのソリューションとして、電源の二次側をフルブリッジ構成にして高出力電圧・低電流化をおこなった。さらにパワー素子の温度を下げるため同期整流化をおこない、効率の良いスイッチング制御をおこなうための新しい同期整流コントローラICを開発した。本稿では当社独自の高効率システムを確立したため報告する。
7 スイッチング電源の設計支援ツールの開発 深石 雄士
スイッチング電源の設計計算は使用するICの理解やトランス設計・回路設計等知識が必要 であり、電源の設計を容易にすることは、その電源ICの採用機会を拡大する効果が期待できる。
そのような機会を増やすため、当社ICを使用した電源設計の設計支援ツール「Sanken STR Pro」を開発した。ツールの対象製品としては、販売数の多いフライバックコンバータ電源ICを選定し、周辺回路を含めた自動計算が可能である。
8 画像検査システム「AI-fact」の開発 桶谷 宗司
デジタル技術の劇的な進化によって、今日では日々の生活にデジタル技術が浸透し、生活者一人ひとりのデジタルリテラシーが大幅に向上している。結果、企業が提供するサービスに対しても高い利便性が求められるようになり、目の肥えた要求レベルに応えるために、新たな価値を創出しなければならない。加えて、今日では少子高齢化によって労働力不足が常態化しており、ひと昔前の「会社が人を選ぶ時代」から「人が会社を選ぶ時代」になりつつある。
当社においてもビジネス環境の激しい変化に対応するため、DX(Digital Transformation)推進施策の1つとして生産工場のスマートファクトリー化となる画像化(官能検査の自動化)に取り組んでいる。今回、これらの要求に応えるために開発をおこなった内製画像検査システム「AI-fact」について述べる。
9 スマートファクトリー推進における設備マニピュレーションシステムの開発 田中 裕之
近年、激しく変化するビジネス環境において、企業競争力の維持・獲得・強化を果たすために、当社が取り組んでいるDX(Digital Transformation)推進の最重要項目として生産工場のスマートファクトリー化がある。スマートファクトリー推進における自動流動を実現するにあたり、設備のパラメータデータや稼働データおよび、品質データなどを吸い上げてチェックシートへの自動転記やその結果から稼働可否を判断することが必須である。しかし、データ収集(IoT)非対応の設備や一部のデータについては、設備仕様上、これらのデータの吸い上げができない状態である。これらを対応可能な独自のシステムとして、自動流動可能な生産システム基盤を構築したので報告する。

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